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連載 私のオリンピック・パラリンピックの思い出

颯希(SATSUKI・ダンサー)

第7回は、日本発・世界初のプロダンスリーグとなるD.LEAGUEに参加するチーム「KADOKAWA DREAMS」で活躍するダンサー・颯希(SATSUKI)さんにインタビュー。6歳でダンスを始め、13歳の時には、当時組んでいたチームで、オーストラリアで開催されたジュニアクラスの世界大会で優勝。AI、湘南乃風、BTSなど、名立たるアーティストのバックダンサーなども経験し、19歳の時にはアメリカ・ロサンゼルスにダンス留学を果たした。1年間本場のスキルを学んだ後、現在は2020年に発足したD.LEAGUEにて活躍中。TikTokでは82万人以上のフォロワーを抱える人気ダンサーの颯希さんが、「オリンピック」と「ダンス」について語る。

第七回 「挑戦」は、何歳になっても遅いことはない

2021/07/14


D.LEAGUEは、ヒップホップ、ポップ、ロック、ブレイキンなど⽇本のストリートダンスの発展と普及を図るために発足したプロダンスリーグで、「第一生命 D.LEAGUE 20-21」(2021/1〜2021/7/1)は9チーム、来期の「D.LEAGUE 21-22」(2021/11〜2021/5)は11チームが参画する。その内の一つの「KADOKAWA DREAMS」は、2000年以降のダンスシーンに革命を起こしたと言われるディレクターのKEITA TANAKA氏含む計14名のメンバーで構成され、そのチームの中で、リーグ元年のシーズンを駆け抜けた颯希さん。2024年のパリオリンピックでは、ダンススポーツ競技・ブレイキンが新種目として追加されることが決定したが、そんな一層注目を集めているダンスに颯希さんが掛ける思いとは?

サッカーのコーチからの“駄目出し”が、ダンスを始めたきっかけに

――まずは、颯希さんがダンスを始めたきっかけについて教えてください。

颯希 6歳ぐらいの頃、近所のサッカーチームに入っていて、コーチに「蹴るリズムが悪い」と言われたんです。それで母からダンスを勧められて始めました。最初はめちゃめちゃ劣等生で(笑)。動いちゃいけない場面で、僕は分からなくて走り回ってしまって先生に怒られたこともありましたが、ちゃんとやると褒められるので、だんだん楽しくなっていって。結局サッカーは小3ぐらいで辞めてしまって、ダンスにのめり込んでいきました。

――幼い頃から世界でも活躍されていたそうですね。

颯希 小学校5年生の時に、スタジオの先生が指名したメンバーで初めてチームを組んで、オーストラリアや韓国の大会にも出場しました。そのチームでは僕が一番年上だったので、リーダーにされたんですね。母からも「リーダーなんだからちゃんと練習しなさい」と尻をたたかれて、泣きながら練習していました(笑)。

そんなふうに毎日、学校が終わったらみんなで集まって、夜遅くまで練習するというダンス漬けの生活を半年間続けて、オーストラリアの世界大会では優勝できたんですけど、自分の中では満足できなかった。だから、よりレベルの高いスタジオに移りました。でもそこでは自分がやってきたことが通用しないんです。ついていけていないことが悔しくて、もっと練習しなきゃと。当時は内気でなかなか他の生徒となじめなくて、孤立しているのを感じながら、一人頑張っていました。

その後、そのスタジオにL.A. (ロサンゼルス)の先生がいらっしゃって、その先生のダンスにべたぼれしたんです。その先生に会いに、1カ月ほどL.A.に行ってレッスンをしたんですが、もっと英語をしゃべれるようになって、もっとコミュニケーションを取りたい、たくさんのことを学びたいと思って、高校卒業後に1年間L.A.に留学しました。

――そこからどうやってD.LEAGUEに参加するようになったんですか?

颯希 L.A.の留学中、今KADOKAWA DREAMSで一緒にやっているMINAMIちゃんが同時期に留学していたんですね。MINAMIちゃんからオーディションのお誘いをいただいて、受けることになりました。

他のチームはD.LEAGUEが始まる1年半くらい前から、作品作りや合宿などの活動を始めていたんですけど、KADOKAWA DREAMSはシーズンが始める3カ月前ぐらいにやっと始動したんですよ。しかもみんな初対面。見ず知らずの人たちとみんなで作品を作ってシーズンに挑んだので、最初は他のチームに比べて圧倒的な時間の差があったのは感じました。

――颯希さんにとって新たな挑戦となったD.LEAGUE ですが、KADOKAWA DREAMSのチームの魅力を教えてください。

颯希 髪の色も派手だし、サングラスを掛けたりしていて、見た目は派手で天真爛漫なやつらが大集合した感じですけど、実際はめちゃめちゃ優しいし、みんなすごいピュアなんですよ。笑った顔も最高。もちろん、ダンスに対してはみんな真剣で、熱いものを持っているので、和気あいあいとなりながらも、ステージの上ではかっこいい姿をお見せできると思います。



「人間ってこういう動きができるんだ」というところを楽しんでもらいたい

――では、ここからはオリンピックのお話を。これまでのオリンピックで印象に残っている競技はありますか?

颯希 小学生の頃、オーストラリアの大会に行くためにアクロバットを習い始めて、3年ほどやっていたのもあって、体操がすごく印象的です。特にリオデジャネイロオリンピックに出られた白井健三さん。宙返りをする間に4回転もひねるなんて、自分もアクロバットに挑戦していたからこそ、あのすごさが身に染みました。引退されると聞いて、残念です。

――今回の東京2020オリンピックで、楽しみにしている競技は何ですか?

颯希 やっぱり体操ですかね。「トリッキング」というダンス競技があるんですけど、アクロバットや体操、ダンスなど、さまざまな要素が入ったスポーツで、空中ですごい回転を見せてくれるんですよ。体操はそれに近いものがあるので、僕にとっても見ていて刺激になります。3大会連続出場の内村航平さんの活躍にも期待したいです。

――2024年からはオリンピック競技に「ブレイキン」が追加されます。ダンス業界もますます盛り上がっていきますね。

颯希 すごく楽しみです! 決まった時は「やっとダンスがオリンピックに!」と、本当にうれしかったです。僕はブレイカーではないので、自分がオリンピック出場を目指すのは難しいですけど、先輩とか、今D.LEAGUEで一緒に活動している方々が出るかもしれないと思うと興奮しますね。オリンピックにダンスの種目が入ることで、まだダンスを見たことないという人にも、ダンスの魅力が伝わればいいなと思います。



――ダンスになじみがない人たちに向けて、ダンスの魅力を教えていただけますか?

颯希 ダンスは古代からあったもので、極論、生きていることが「ダンス」なんです。喜んで跳び跳ねたらダンスだし、悲しくて落ち込んでいるだけでダンス。そういう感情表現をビビッドに伝えようとしているのがプロのダンサーなのかもしれません。

最近は学校の授業にもダンスが取り入れられて、苦手な人もいるんでしょうけど、かっこ良く踊るのがダンスじゃない。表現したいことを表現する。ありのままの自分を表現するのがダンスで、イコール人生なんじゃないかと思います。ダンスだからと構える必要はないと思います。観戦するポイントとしては、人間ってこういう動きができるんだ、というところを楽しんでもらいたいです。

――颯希さんにとって、ダンスを通して最も鍛えられたものは何ですか?

颯希 「心」じゃないですかね。最初はみんなについていけなくて泣いていたのが、びっくりするぐらい強くなりました。L.A.での1カ月間のレッスンに2回参加しているんですけど、毎日朝5時に起きて家の周りを走ってから、1日中練習するという厳しいメニューでした。先生に練習の成果を披露する時には、できが悪かったり、不安な顔ややる気のないところを見せると、「もう日本に帰っていい」「きみ一人いなくても構わないから」ってものすごく怒られるんですよ。もちろんその厳しさは愛があってのものなんですが、そういう中でずっとやってきているので、精神面はすごく鍛えられました。

それに、プロのダンサーが活躍する現場では、どんなに有名なダンサーさんと一緒の場でも、前に出た方が勝ちみたいな雰囲気があります。臆せずに行動できるかどうか、行動力も身に付いたと思います。

――これまでのお話を聞くと、スポーツ競技としてのダンスがより身近に感じられそうですね。

颯希 TikTokで、「中3なんですけど、今からダンスを始めても遅いですよね」というようなコメントをよくもらいます。でも、何歳になっても遅いことはないと思っています。うまい下手ではなく、いくつになっても挑戦することが大切だと思います。これからは、ブレイキンでオリンピックを目指すという夢を持つことも可能なので、ぜひ多くの人にダンスを始めてもらいたいですし、プロのダンスも観ていただいて、いろんなものを感じ取ってほしいです。




取材・文=﨑山瑠美子/写真=奥西淳二


颯希(SATSUKI)

2000年8月21日生まれ。6歳からダンスを始め、13歳のときに当時組んでいたチームでオーストラリアでの世界大会に参加し優勝。その後、AI、湘南乃風、BTSなど、さまざまなアーティストのバックダンサーを務めたほか、国内外のイベントにも出演。19歳のとき、アメリカ・ロサンゼルスにダンス留学。留学中はSteve AokiやLay(EXO)などのPVにも出演した。帰国後は、ダンスプロリーグ「D.LEAGUE」のチーム「KADOKAWA DREAMS」に加入。リーグ初年度となる2021年、レギュラーメンバーとして参戦し、世界レベルのパフォーマンスを披露した。また、TikTokでは毎日ダンス動画を投稿するなど、精力的に活動しており、82万人以上のフォロワーを抱えている。


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東京2020オリンピック公式ガイドブック
東京2020オリンピック公式ガイドブック

発売日:2021年6月30日(水)
定価:1,980円(本体1,800円+税)
判型:A4正寸
ページ数:190P

書籍詳細